35、叔父と甥

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「あのじーさんが余計なことせぇへんで、大人しく婚約解消しておけば、あんなことにならへんかったのに」     「せや……あの騒ぎきつかったわ。佐和子の浮気は正直、どうでもよかったけど、あの後のあれが……あんときは食事でけへんくなって、マジでEDなりかかったもんな」     雅煕がボリボリと髪をかきむしり、残ったビールを飲み干す。 「結局、そこから立ち直るのに六年か……千年前のゴミクズ文書の研究始めた聞いた時は、和泉家もおしまいやと思うたわ」  晴久が感慨深く呟けば、雅煕も言った。 「でも、パリの学会行ったおかげで杏樹に()うたわけやで?」 「せやな。ゴミクズ文書様様や」  ふと、雅煕が思い出す。   「ああそっか、杏樹をいつも虐めてる性格の悪いイトコ……というかハトコらしいねんけど、その美奈子って女が佐和子の後輩になるらしい。それで杏樹の耳に、マザコンとインポを吹き込んだわけか。ほんまに性格悪いな」   雅煕がしばらく天井を見上げてから起き上がる。 「てことは、杏樹は可哀想に、まったく無駄なことで悩んでたんやんか! なにそれ、ちょっと今すぐ電話して教えて――」
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