35、叔父と甥

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「せやな、早く教えてやれ。ウチの家からは内情に踏み込めへんのや」  やれやれ、これで一件落着かと晴久が思ったその直後、雅煕の絶叫がスイートルームに響き渡る。 「……着拒されてる! なんで! 俺、なんかした?……もしかして、昨日しつこくヤり過ぎて怒った!?」 「着拒されるほどしつこくヤった自覚があるんか、雅煕お前、マジで腎虚で死ぬぞ!」 「だってこれが最後なんて言われたら、このまま死んでもいい思うやん!」  わしゃわしゃと髪を掻きむしる雅煕を見て、晴久も数秒考える。――遠目に見た、杏樹のどこか思い詰めたような後姿。いかにも純情そうな――   「それはきっと――杏樹ちゃん、めっちゃ素直でいい子なんや。インポ御曹司に嫁ぐ以上、この世に存在しないそいつに操を立てて、お前との関係を切ったんや!」 「いや、それ、早まり過ぎ――!」
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