36、美奈子の企み

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 大伯母が不倫の挙句に産んだ、日仏ハーフの美人女優・喜多川マリの娘。北川家の恥さらし。なのに――  近所でも評判の美少女で、通学電車は毎朝、杏樹の乗る車両だけ男子学生で満員になる。美奈子の憧れの先輩も杏樹のファンで、親戚だと知ったらしつこく杏樹のことばかり聞いてきた。  杏樹みたいに目が大きかったら、杏樹みたいな肌の色だったら、杏樹みたいな髪だったら――  髪型や化粧、プチ整形まで、美奈子がどんなに頑張って追いつこうとしても、何もしない杏樹の美しさはあっさり、美奈子の努力を追い抜いていく。すっぴんに近い素肌の透明感や、染めてもいない栗色の髪の艶やかさに、美奈子は逆立ちしたって敵わない。  悔しかった。憎かった。杏樹の持っているものが全部欲しかった。パリで健司を奪った時は爽快な気分だったのに。    パリで再会した時、杏樹は妙にダサい眼鏡の男と一緒にいた。ダサいけど、高級ブランド店にVIP待遇される男。  奪ったはずの健司の魅力が急速に萎んでいく。――どうして、いつもいつも、杏樹ばっかり……!      帰国後に、杏樹を指名して縁談が来た。相手は、和泉財閥の御曹司。
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