36、美奈子の企み

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「お願い、急いでください!」    その様子を門の陰から見ていた美奈子が、ニンマリ笑ってタクシーを見送る。  急遽レンタルした絽の振袖。白地に足元につれて灰色から黒地になるぼかしに、流水文様のそれは、どちらかというと演歌歌手が着ていそうな雰囲気で、アップにした髪には大きな赤い造花の髪飾りという、お茶事にはふさわしくない姿ではあったが、美奈子は意気揚々とタクシーを呼び出し、杏樹の代わりに会場へ向かった。
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