3、オテル・ド・ロンシャン

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「はい。スマホ、失くしたから電話繋がらないって、伝えておかないと」  桜井がすぐにスマホを出して、ロックを解除して日本の国番号を入れてから、「このまま市外局番から入れたらかけられるさかい」と渡してくれたので、杏樹は東京の自宅に電話をかける。 「もしもし、おばあちゃま? わたし、杏樹です」 『杏樹、あんたどうしたの、さっきから電話かけて――それに見慣れない番号』 「実はスマホを失くしてしまって、今、助けてくれた人のスマホを借りてかけてるの。悪いけど、そちらからかけ直してくれる?」    祖母はすぐに承知して、杏樹は電話を切る。やがて――  スマホが鳴ったので、番号を見る。自宅の番号ではなく、祖母のスマホからの着信だ。桜井が取り、杏樹に渡す。 『スマホ失くしたって? 何やってるの!』 「お小言は日本に帰ってから、聞きます! とにかくわたしは元気だから――」 『ちょっと待って、じゃあ、何かあっても連絡しようがないってことじゃない』 「連絡先がはっきりしたら知らせるわ」 『その、助けてくれた人は日本の方なの?』 「うん」 『じゃあ、ちょっとその方に代わってちょうだい』
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