38、杏樹危機一髪

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 顔を上げた先にいたのは、見たこともない男。黄色く染めた髪は生え際が黒くなっていて、Tシャツにジーンズのラフな服装。  ――雅煕さんじゃない?!  「うっひょう! ほんまに振袖美女来た! うっわあああ! すげぇな、お見合いブッチしてマサヒロに会いに来たんや! 何この上玉!」 「だっ……誰?!」  杏樹は白いハンドバッグを握りしめ、反射的に後ずさったが、ドアはロックされ、さらにうち開きのため逃げられそうもない。 「杏樹ちゃん、だっけ? 名前からして可愛いやん。この前ナンパした女とほんまに親戚なん? イトコを懲らしめたいからレイプして写真撮ってネットにばら撒けって……可愛い顔してずいぶん恨まれてんねんな?」 「……イトコって……美奈ちゃんが?」       男からにやけた表情で告げられて、杏樹はゾッと心臓が凍る。――美奈子に好かれていないことは知っていた。だからって見知らぬ男にレイプして写真撮らせるなんて、そこまで――? 
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