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その時、プー、プーッとベッドの枕元の電話が鳴る。男はチッと舌打ちすると、手にした布テープをビリッと破いて杏樹の口をふさぐと、両手を後ろ手に回して結束バンドで拘束した。
白いハンドバッグが床に転がる。
「ンンーー!」
男は杏樹から離れて電話を取る。
「はい?……フロント? 電話なんてしてへんで! なんやねん、かけてくんな、今こっちは取り込み中――」
杏樹はその隙にドアに駆け寄り、ドン、と体当たりして、何とかロックを開けようと身体を擦り付けるが、上手くいかない。ドン、ドン! とドアにぶつかっていると、電話を切った男が戻ってきて杏樹を引っ張ってベッドの上に投げだした。
「んんん! ンンーーー!」
「うわあ、どうしよう! 俺、こんなお着物の脱がせ方がわからへんわ。どないなっとんねん、これ」
男はスマホを出して、「着物 脱がせ方」で検索するのだが、出てきたのは名古屋帯のお太鼓結びのもので、振袖のふくら雀とは全然違っていてわけがわからない。
「え、全然ちゃうやん、どうやって脱がすんやこれ?」
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