39、救出

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39、救出

 リンゴーン!  ドアベルが鳴って、ドアの外から声がかかる。 「フロントでございます! 先ほどのお詫びにワインのサービスでございますー!」  ドンドンと扉を叩かれ、男がハッとする。 「山本様ー! フロントでございまーす!」  チッと舌打ちして、男は杏樹をベッドスプレッドの下に押し込んで隠すと、返事を返す。 「いえ、けっこうですー! 遠慮します!」 「いえいえ、そんな、ホテルとして大変申し訳なく、支配人の鴨田と申します。是非、直接お詫びさせていただきたいので、どうかこちら開けてくださいませ」 「いや、ちょっと困るって! 帰ってください!」 「え? 何かお困りですか! 何なりと当ホテルにお申し付けください!」 「帰れゆーとんねん!」    ついにキレた男がロックを開け、扉を少しだけ開けて追い返そうとする。 「もういいから! うるっさいわ! 帰れよ!」  そのわずかな隙間にドアマンと支配人がワゴンでガシャンと突入し、扉の閉まるのを防ぐ。
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