39、救出

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 しばらく互いの唇を貪り合うと、口づけの鎮静効果か、杏樹の身体のこわばりがほどけてくる。そうしてようやく唇を解放され、杏樹がとろんと潤んだ目で雅煕を見上げた。 「雅煕さん……」  「杏樹、何があったの?」 「電話が……関西弁で……オレオレって言うから……てっきり、雅煕さんだと思って」 「関西弁の電話で……オレオレ詐欺……」  予想外の答えに、雅煕が目を丸くする。 「今すぐ来てくれないと自殺するって言われて……ちょっと考えたらおかしいよね。わたし、やっぱりバカだ……」  俯いて唇を噛む杏樹を、雅煕が抱きしめ、顔を上げさせて額と額をくっつける。 「杏樹、せやったんや……ごめんな、心配させて……」  「……美奈ちゃんが……美奈ちゃんがあいつにレイプさせて、写真撮ってネットにばら撒くように頼んだって……」 「!!」  ギリッと雅煕が奥歯を噛みしめ、抱きしめる腕に力が加わる。 「……あのクソ女、ただで済むと思うなよ……」      雅煕の呟きを拾って、杏樹はハッとする。 「そう言えば……雅煕さんはどうして東京に? あ、そうだ! 時計を返さないとって……」
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