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40、美奈子の始末
着付けと髪を直し、化粧も整えてから、二人は待っていた車に乗り込む。運転手が滑らかに車を発進させた。
「あの……あの人どうなるの? 警察?」
ホテルを振り返って尋ねる杏樹に、雅煕が首を振る。
「後は、叔父さんに任せて。……どうなったか聞く必要はないというか、聞いたらあかんというか……そういうの全部、専門にやってくれる人がおるんや。北川家の方にも、報告はウチの方からするさかい」
「……美奈ちゃんはどうなるの?」
不安そうな杏樹の問いかけに、雅煕が少しだけ微笑んだ。
「まあ、何もなし、というわけにはいかへんやろな。ちょっとやり口が限度を超えとる。パリの時も思たけど、やっていいことと悪いことの区別のつかん人間を、これ以上野放しにはでけへん」
「そこまでされるほど、わたし、嫌われることしたかな……?」
「嫉妬心というのは、こちらが何もせんでも、あちらで勝手に募らせるもんやさかいに。杏樹は悪くない」
窓の外の風景を眺めていた雅煕が、急に杏樹に向き直った。
「あんな、杏樹。お願いがあるんやけど」
「え? なんですか?」
「絶対、怒らないって約束して欲しいねん」
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