40、美奈子の始末

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「あ、杏樹が京都に来た時は、俺にも内緒で縁談が進んでたんや! 和泉家の御曹司ってだけで、結婚したがる女が多いらしいねん。せやさかい、正式な婚約までは、縁談は全部秘密にすんねん。俺本人にも知らせへんとか、頭おかしいと思うけど! だからあん時は本気で、杏樹は他の男と見合いするんやと俺かて思うてたよ! 後で叔父さんに聞いて、慌てて電話した時には、着拒されてて……」 「ひどい……あんなに辛い思いで、雅煕さんのこと諦めようとしたのに……」  自分がとんでもない勘違いをしていたと知り、杏樹はショックと恥ずかしさで眩暈がした。  口元を押え、目を潤ませる杏樹の肩を、雅煕が慌てて抱き寄せ、耳元で囁く。 「ごめん……数日のことやし、見合いさえ済めばと、俺も甘く見てた。俺自身は縁談には関わったらあかんキマリになってんねん。キマリに囚われた結果、怖い目にも遭わせてしまった。ほんまごめん……」  「ううん……わたしも、叔父さんたちにもっとちゃんと確かめればよかった……。てっきり、雅煕さんとは別人とばかり……」
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