40、美奈子の始末

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「一番悪いんは、和泉の家の秘密主義やけど、写真はともかく、名前すらちゃんと説明せえへんかった、北川のオッサンらが最大の戦犯やとは思う。杏樹のおばあちゃんは、オッサンらが当然、名前は告げてると思うやろうしな」  雅煕が杏樹の肩を抱き、杏樹が頭をそっと雅煕の肩に傾ける。 「でも、すごく恥ずかしい……わざわざ会いに行ってあんな……」 「俺かてあの時は、まだ縁談のこと聞いてへんかったし、びっくりして……冷静に考えたら、そんな御曹司が日本に何人もおるわけないのにな。俺が間抜け過ぎたせいで、美奈子につけ入る隙を与えてしまった。ごめん……」 「美奈ちゃんに、あそこまで恨まれてるとは思ってもみなかった……」  杏樹が雅煕を見上げ、言った。 「……ありがとう。助けに来てくれて。いつもいつも、雅煕さんに助けられてばっかり」 「《好きな女には命を張る》も家訓や。……ほな、お見合いやり直しに行こ」     杏樹がコクリと頷き、雅煕に手を取られて再び歩き始めた。  茶会はちょうど中立で、路地の腰掛に四郎左衛門が一人で座っていた。後座の開始を告げる銅鑼(ドラ)の音が響く。
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