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「苦手だけどしょうがないじゃん! せめて日本語の通じるところにしてください、って言ったら、じゃあ、マグロ漁船って言われたから……」
「マグロよりはカレーの方がマシよね」
「だから、今から死ぬ気で英語勉強しないとだから、ちょっと出てってくれる? それでなくても、東京サクラホテルで地獄の研修受けさせられて、今、死にそうだから!」
京都土産の阿闍梨餅を持ってきただけなので、杏樹は大人しく退散しようと背を向ける。すると――
「あ、あの……」
呼び止められ、杏樹が振り返る。
「あ、あやまってすむことじゃないけど、悪かったわ……」
「……あ、うん。無事だったからまあ……」
「ずっと杏樹のことが嫌いで……羨んでばっかりだったけど、杏樹の持ってるものを欲しがる癖はやめようと思うの。それは、自分をもっとミジメにするだけだって気づいた……」
「……美奈ちゃん……」
美奈子の意外な告白に、杏樹がまじまじと見つめると、美奈子はきまり悪そうに視線を逸らす。
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