41、霜月の茶会

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「今は文学博士やなくて、博士(文学)ってゆうねんで、兄ちゃん」 「ホウ、なら死神博士は、今風に言えば、博士(死神)なんやな!」  幸煕のボケにすかさず雅煕が突っ込む。 「兄ちゃん、死神博士の死神は苗字や。カッコに入れてどないすんねん」  和泉本家は継がないが、幸煕も番頭家の一つである、関西の大手私鉄グループを継承する御曹司のはずだ。   (御曹司同士の会話なのに、漫才にしか聞こえない……)  杏樹の表情を読んだらしい文緒がそっと耳元で言った。 「家族が集まるといつもこんなんよ。一番面白いこと言った人が優勝なのよ」 「優勝?……まさか家庭内M-1……?」 「まあ、似たようなものね。腹筋が鍛えられるわ」  文緒に言われ、杏樹が思わず下腹を撫でる。雅煕が、兄に尋ねる。 「なあ、兄ちゃん。さっき茶室で、彼女のおばあ様と一緒に一服いただいたんやけど。――おじい様、杏樹のおばあ様とよりを戻すきっかけが欲しくて、俺と杏樹の縁談ゴリ押ししたんちゃうの? 俺、ひそかに(うたご)うてんのやけど」 「あり得へん話でもないな。あの人、意外としつこいさかいに」  
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