41、霜月の茶会

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「俺のおばあ様はだいぶ前に亡くならはったけど、別に何か大変な仕事をしている風には見えへんかったで。まあ、強いて言えば、春秋の茶会で長時間正座するおじい様の補佐……かなあ? 茶会の半東(はんとう)さんはずっとおばあ様がしてはったらしいから」    「そうなんだ」 「杏樹はお茶習ってるやろ?」 「ええまあ……」  子供のころから、祖母の強い意向でお茶とお花はやらされていた。    「だから大丈夫や。あとは俺がグレへんように毎晩慰めてくれるのが、君のお仕事や」 「グレる?」  杏樹が首を傾げれば、雅煕が少し唇を歪めた。 「だって、一番重要な仕事が、春と秋の茶会で茶室で正座することやねんで? それ以外、特になんもすることないねん。一応博物館の館長もやるけど、名目だけやし。そんな仕事やのに、父親から頭を下げられてもふんぞり返ってなあかん。……普通、グレるやろ、こんなん。アメリカで死んだ(はるか)叔父さんかて、グレてヤクに手を出してラリって大型トレーラーに突っ込んだんや」 「雅煕さん……」
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