epilogue

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 茶会が終わり、近い親族だけが招かれた夕食会も無事に終了した。  祖母はそのまま本邸の客室に、杏樹は、雅煕が住む本邸の離れ――跡継ぎが住む洋館造りの別館――に通された。  今日のお披露目が終わるまでは、別館ではなく、御池のサクラホテルに宿を取り、雅煕がそこに通う形をとっていた。今夜からは晴れて、婚約者として雅煕の家に泊まることが許される。  杏樹はまず、離れにある唯一の和室で、和泉家の老女中に手伝ってもらって振袖を脱いだ。  大きな胸を潰すように何枚もタオルを巻いていたから、すべての紐という紐を解いて、ホッと息を吐く。  ――真の解放とはこのことね。  和装用の下着になったところで、時乃(ときの)さんと名乗る老女中が紺地に千鳥の柄の浴衣を肩に着せかけてくれて、言った。 「お先にお風呂におはいりやす。今日はほんにお疲れ様でした」 「では、お先にお風呂いただきます」  座敷からさほど遠くない風呂場に案内され、ひと風呂浴びて、帰りは自分で浴衣を着つけて帰ってくると、廊下で綿のシャツの上にカーディガンを羽織った雅煕とばったり出くわす。
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