epilogue

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「いや、だってトイレが……」 「すごい知見を得てしもうた。論文一本書けそうや」 「そんな恥ずかしいことで論文、書かないでください!」 「なあ、後でそれ、もっかい穿いてくれへん?」 「いやです! この変態!」  和装用下着に妙に執着する雅煕から、杏樹は逃げだした――        雅煕の部屋は、文字通り、本で埋まっていた。  壁という壁はすべて、天井までの本棚になっていて、入りきらない本が床に積んである。それも、杏樹がこれまで見たこともないような、中国語の本ばかり。 「すっごい。これ、全部読んだんですか?」 「読むわけないやん。こん中のほんの一行見たいけど、セット売りしかしてへんから仕方なく買うたやつとか、とりあえず買っただけのやつとか、そんなんがほとんどや。後は辞書とか――」  ポカンとした表情で見上げている杏樹をベッドの方に導きながら雅煕が言う。 「面倒くさいからここで寝てたけど、杏樹が住むまでには二階に寝室を移して、ここは完全に書斎にするわ」 「まあ、そうですよね……」
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