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「何より、地震の時に危ない。この前も上からゴッツい辞書がガーンッて落ちて来て、直撃してたら確実に死んどったわ」
本棚の倒壊を防いだとしても、本が落下してくるのは防ぎようがない。
ベッドに並んで腰を下ろし、なんとなく本棚を見上げながら、杏樹が尋ねた。
「ねえ……雅煕さん。やっぱり、わたしみたいなバカでいいの?」
「うーん、多少、ものを知らなさ過ぎて不安になる時はあるけど、嫌だとかは全然、思わへんな。俺かて何のかんの言って、要は学者バカやから」
雅煕が杏樹の肩を抱き寄せて、こめかみに口づける。
「俺は杏樹がいい。アホとか賢関係なく……杏樹が可愛いから」
雅煕はそう言いながら、杏樹の浴衣の、帯代わりの伊達締めを解きにかかる。それに戸惑っているのを察知して、杏樹は自ら伊達締めを解く。男の手が衣紋にかかり、するりと脱がされて――
「……そう言えば」
杏樹が思いついて雅煕に尋ねる。
「前に婚約していた人とは、こういうことしなかったの?」
雅煕が手を止めて、杏樹の目を覗き込んだ。
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