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『おう、どうしたん? 今どこおんねん』
「今、パリや」
『パリ? パリってあのパリか! おフランスの!』
「せや、学会あるゆーたやん」
『千年前のゴミクズ学会か』
「せやせや、それでやね、にいちゃん外務省に知り合いいてるよな?」
『外務省? そらおるけど、お前、なんかしたんか』
「俺じゃなくて、知り合いがパスポート盗られてん」
『ほう! えらいこっちゃ!』
「んで、今、大使館に再発行の申請にきてるんやけど、戸籍謄本がいる言われてん」
『そんなん無理やん』
「やろ? 何とかしてよ。パスポートないと国に帰られへんやん」
『わかった。今、パリの大使館におんねんな? パスポート失くした人の名前は――』
ハラハラと見守っていると、桜井が杏樹の名前を告げ、電話の相手が少し驚いたらしい。
『女の子か!』
「この際、性別はどうでもええやろ」
素早いやり取りの末に、桜井がふうっ、と息を吐きながら通話を切る。
「お、お、お兄さん?」
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