4、大使館

6/8

2326人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
  『おう、どうしたん? 今どこおんねん』 「今、パリや」 『パリ? パリってあのパリか! おフランスの!』 「せや、学会あるゆーたやん」 『千年前のゴミクズ学会か』 「せやせや、それでやね、にいちゃん外務省に知り合いいてるよな?」       『外務省? そらおるけど、お前、なんかしたんか』 「俺じゃなくて、知り合いがパスポート盗られてん」 『ほう! えらいこっちゃ!』 「んで、今、大使館に再発行の申請にきてるんやけど、戸籍謄本がいる言われてん」 『そんなん無理やん』 「やろ? 何とかしてよ。パスポートないと国に帰られへんやん」      『わかった。今、パリの大使館におんねんな? パスポート失くした人の名前は――』   ハラハラと見守っていると、桜井が杏樹の名前を告げ、電話の相手が少し驚いたらしい。 『女の子か!』 「この際、性別はどうでもええやろ」  素早いやり取りの末に、桜井がふうっ、と息を吐きながら通話を切る。           「お、お、お兄さん?」
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2326人が本棚に入れています
本棚に追加