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「そう。兄貴、アメリカに留学してたし、外務省にそこそこ人脈があんねん。あんまり頼りたくはないけど、戸籍謄本送ってもらうよりはマシや」
「なんとかなりそうなんですか?」
「10分待てって」
つくづく何もできない自分が情けなくて、杏樹が俯いてしまう。桜井が杏樹の肩をポンポンと叩いた。
「大丈夫や、兄貴の威力は絶大や」
「そんな偉い人なんですか、お兄さん……」
桜井がそれには答えないでいると、スマホが鳴る。
「もしもし、にいちゃん?」
『おう、雅、話つけといたぞ。パスポートのコピーでなんとかしてやるって確約とった!』
「ありがとう、にいちゃん、助かったわ!」
『その代わり、日本戻ったら紹介せえよ』
「そんな間柄やないから!」
プチッとスマホを切ると、桜井が晴れ晴れとした声で言った。
「ほな、行こ! 難癖つけてきよったら、僕がまたにいちゃんに電話したるさかい!」
杏樹の背中を押すようにしてもう一度申請窓口に向かい、今度は一発でオーケーが出た。
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