5、お礼に処女をもらってください!

1/7

2326人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ

5、お礼に処女をもらってください!

 大使館を出て、バス停まで歩きながら、杏樹は改めて桜井に礼を述べた。 「ほんっとうに、何から何までお世話になりっぱなしで、ほんとありがとうございます! ……桜井さんもその、調査があるのに、わたしのために貴重なお時間まで使わせてしまって、なんてお礼を言ったらいいか――」 「それはもうええって。僕は今日は中休みで、することないし図書館でも行くかなって思ってたところやったし。――それに、乗りかかった船というか。あの時僕が居合せへんかったら、いったいどうなってたんかなって思うと、実はちょっとばかり、背筋が寒ぅなるねん」  桜井が少し神妙な口調で言うので、杏樹はハッとした。 「外国への一人旅は、僕みたいなデカい男でも危険がいっぱいや。それやのに、こんな若い女の子が一人で、大きな荷物引きずって、危なっかしいなって、後ろから見ててん」  桜井が少し視線を逸らし、足元を見下ろす。 「黒いジャンパーの男が駆け寄って、怪しいなって思ったら。結局、後ろから見てるだけで、なんもでけへんかったし――」  「だから、ずっと面倒見てくれたんですか!」   
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2326人が本棚に入れています
本棚に追加