5、お礼に処女をもらってください!

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 桜井は困ったように眼鏡のブリッジを人差し指でクイと上げる。 「まあその――容姿で差別するのはあかんと思うが、は放っといたらあかんやろと。下手すると売り飛ばされてしまうわ」 「売り飛ばされるってことは、ないんじゃ――」  「甘い。三杯酢の心太(ところてん)や思うて喰うたら、黒蜜かかってた時くらい、甘いな」 「意味がわかりません」    杏樹は桜井の言葉に困惑したが、たしかに、外国で一人旅をする覚悟が足りなかったと言われれば、その通りだ。  健司の家に行き、健司にあえば全部解決すると思っていた。ひったくりに遭ったのも、杏樹の認識の甘さのせいだ。 「本当に、どうお礼をしていいのか。なにか差し上げるにも、お金も取られちゃったし――」  ぐずぐずと言う杏樹に桜井がふっと笑う。 「ほんまもう、ええってそれは。災難に遭って困っている人を助けて、何か見返りを期待するか? せえへんやろ」 「……そうですけど、わたしの気がすまないっていうか――」 「しつこいな、君も。そこまで言うんやったら、身体で返してくれる?」 「え!」
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