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6、そこまで煽って寝落ちですか!?
「はあ!?」
バスの中でのとんでもない告白に、桜井の眼鏡の奥の瞳が最大限に見開かれ、あわてて周囲を見回し、声を潜める。
「こんなとこで、冗談にしてもなんてこと言うねん! 幸い、日本人らしいのはいてへんけど、日本語わかる人がいーひんとは限らへんのやで!」
「冗談じゃないです! 本気です!」
「ちょっ……たしかに僕はさっき、不適切なセクハラ発言をかましましたが、けして本気では……て、処女? マジで?」
驚愕の表情でまじまじと見つめられ、杏樹はショックを受ける。
(――え、わたし、もしかしてビッチだと思われてた?)
桜井が怪訝な表情で言う。
「え、だ、だって彼氏んとこ泊まる予定――」
「だからまだ彼氏じゃないし。――その、初めてをあげるつもりではいたけど――」
そう言って杏樹が目を伏せれば、桜井は「マジか……今頃、血の涙を流しているやろ、そいつ……」などとぶつぶつ言っているが、杏樹には意味がよくわからない。
「……とにかく、落ち着きなさい。処女は、そんな簡単に、それもお礼に差し出すもんやないから!」
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