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というわけで、角地にある気楽そうなカフェで、オープンテラス席か店内か問われ、迷わず店内を選ぶ。オープンテラスで寛ぐ人々を見て、杏樹は不思議でならない。
「こんな寒い夜に、外で食べるんですね?」
「ほんまや、フランス人頭おかしいな。――まあ、日本でも冬に屋台出ることあるけど」
ウェイターがメニューを持ってきたので、桜井がそれを受け取る。杏樹も横からメニューを覗き込んだが、全部フランス語で書かれていて、何一つわからなくて諦める。
「二十歳、やったっけ。お酒は飲めるの?」
「少しなら」
「……白ワイン頼んで大丈夫? 無理やったら僕が呑むから」
「はい!」
グラスの白を二杯と、店の名物らしいフレンチ・オニオン・スープと、前菜にエスカルゴ。
「魚はサーモンかなあ……」
桜井は他の客のテーブルを見て料理の量を確認する。
「あれ一皿全部喰うんは無理そうやな」
「一皿でお腹いっぱいですね」
「魚と肉と一皿ずつ頼んでシェアできるかな?」
桜井が注文を告げると、ウェイターが頷く。
「Que diriez-vours d'un dessert?(デザートはどうです?)」
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