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やや低いしっとりした関西のイントネーションは、間違いなく昨日の桜井のもの。でも――
「……杏樹? 僕の顔になんかついてる?」
「ううん、むしろついてない――」
目が醒めたら、そこには醤油顔のイケメンが! ――なにこれ、何が起きたの?
「あの! わたし――」
「ああ、結局、この部屋に戻った途端にバタンキューで爆睡やったさかい、そのまま寝かせといた」
「え、あ、う……さ、桜井さん!?……ですよね?」
昨日のダサ眼鏡男と同一人物とはどうしても信じられず、思わず問いかける杏樹に、桜井が形のよい眉を寄せた。
「当たり前やん。僕以外の男がいたらヤバいやろ。安心してや、うちは先祖代々タイガースファンやから悪いことはせえへん。僕は隣のベッドで寝たし」
「た、タイガース? ええ? 何の話です?」
しかもイケメンは混乱の火に謎の油を注いでくる。杏樹はほとんどパニックになっていた。
――ちょっと待って! ダサ眼鏡のオタクが、眼鏡取ったらイケメンだなんて、そんなの聞いてない!
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