7、お守り

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 未遂がどうか確認する勇気がなく、杏樹は真っ赤になって俯いた。    桜井に合わせて、杏樹も九時過ぎにホテルを出た。  桜井はスーツの上にグレーのチェスターコートに、茶色い革のブリーフケースを持って、昨日と同じなのは黒縁の眼鏡だけ。――本当に別人にしか見えない。杏樹はマスタードイエローのダッフルコートに、桜井に借りた黒革のショルダーバッグを斜めかけにした。――男物だから少しごついのだけど、この際、文句の言える立場ではない。  (このブランドバッグ、けっこうなお値段するよね。――親は金持ちって言ってたけど、スーツも高そうだし、本当に裕福なんだ……)   「僕は今日、学会で五時まで動かれへん。大使館には一人で行けるよな?」   「はい、大丈夫、です!……昨日の道も覚えてるし! 12番のバスで、サントノーレ通りのバス停で降りる!」 「残念、バスは22番やし、バス停は向こうやで」    桜井と同じ方向に歩きだそうとして、バス停はあっちだと指摘される。 「えーっと……桜井さんの学会会場を見学してから、行こうかなって……」 「今思いついて適当に言うたやろ。調子のいい……」
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