7、お守り

6/8
前へ
/337ページ
次へ
 だが桜井もまんざらではないのか、杏樹がついてくるのを止めない。     「五時にEFEO(フランス極東学院)の前で待ち合わせる? なら、場所を確認していく?」 「そうします! 若いから、歩くのは平気!」     並んで歩きだしてから、桜井が思い出して言った。 「そう言えば、さっき警察から電話があったわ」 「え、なんて?」 「見つからへんかったって。スマホも財布も。――犯人も」 「あ……」    覚悟はしていたが、はっきり言われれば、がっかりしてため息をついてしまう。 「スマホにはロックをかけてあるから、悪用はでけへんはずやけど。取り戻すのは諦めるしかなさそう」     「そうですか……」  桜井が、意気消沈している杏樹を慰めるように言った。   「今日はちょっといい店で、()()()()食べよ。――僕も今日の発表が終われば、ちょっと肩の荷がおりんねん」  杏樹がガバっと顔をあげ、満面の笑顔で桜井を見た。 「やった! 文無しの分際で言うべきじゃないですが、フォアグラかトリュフかキャビアが食べたいです! できれば全部!」 「君なあ……」
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2325人が本棚に入れています
本棚に追加