7、お守り

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 桜井がスマホを取り出して地図アプリを呼び出し、指で画像を拡大しながら言う。     「ここがEFEOやから……このあたりで、どっか適当に予約しとくし」  画面をのぞき込んだ杏樹の目の前を、桜井の長い指が器用に動く。 「はい! すごい楽しみ! 今日こそ酔っぱらわない!」  ホテルから学会会場までゆっくり歩いて十分程度、装飾のある鉄格子の地味な扉の前で、桜井が足を止める。看板も何もなく、辛うじて、フランス国旗が控えめに翻るだけ。 「え? ここ?」 「そう。このへんに五時過ぎにいてるから」 「あ、でも……わたし、時計がないから、遅れちゃったらごめんなさい……」   「……ああ、そっか……」    しばらく顎に手を当てて考えていた桜井が、自分の腕時計を外す。 「左腕出して」  言われるままにダッフルコートの袖を捲った杏樹の腕に、鈍く光る銀色の時計を巻き付ける。ワインカラーのニットの上からでもスカスカで肘に近い部分まで上がってしまう。   「ガッバガバやな」 「これ、桜井さんの持ち物の中で一番高いんでしょ? 落としたら怖いし――」
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