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青空の下、放射状に道が広がるパリの市街を眼下に一望し、ちょっとした王様気分。パリって、真っ平なんだな……と妙な感慨を覚えつつ、ぐるりと一周する。二月の風はまだ冷たく、杏樹はそれなりに満喫したので早々に降りることにした。
――無料トイレもあったし、十二ユーロの元は取った!
そんな充実した気分で、さて次はどこへ行こうかなと周囲を見回していた時。
「杏樹!?」
日本語で呼びかけれられ、びっくりして飛び上がる。振り返れば、二度と会いたくないとまで思った男と、どうせ日本でまたすぐに会うであろう、大嫌いなイトコが腕を組んで立っていた。
「どこにいたの、ずっと電話しても繋がらなくて!」
美奈子の腕を振り払って駆け寄ってくる健司を、杏樹は身を固くして見上げた。
有名なブランドの、白いもこもこのダウンジャケットに、ジーンズ。首元にはシルバーのアクセが光る。背はそんなに高くはないけど、茶色く染めた髪は気をつかってかっこよくセットされている。昔はオシャレなところが大好きだったのに、今は白いダウンのせいか、タイヤメーカーのイメージキャラにしか見えなかった。
「杏樹!」
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