9、フランス極東学院

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 それから、杏樹の顔を覗き込むようにして続ける。   「まあ僕も、って嘘言って言い訳に使い倒したし、お互い様や。お礼に今日はええもん食べよ。……なんやしらん、どこも予約いっぱいで、断られまくったけど、日本人シェフのやってる店がキャンセル出たからって……」    プレジダン・ウィルソン通りを進み、イエナ広場に至る。夜だと言うのに交通量が多く、クラクションに驚いた杏樹が思わず桜井にしがみついた。   「車が多いな、気いつけて」 「は、はい……」     そのままごく自然に手を握られて、杏樹の心臓が跳ねる。でも、おそらく桜井は保護者感覚なんだろうと思い直し、素直に手を引かれていく。五差路の真ん中に台座があり、騎馬の人物像がライトアップされていた。杏樹が指さす。 「あの人誰ですか?」 「あの人?……ああ、あの銅像は、たしかジョージ・ワシントンや」 「誰? 有名人?」 「え、ワシントンを知らんとかありえへんやろ。アメリカの初代大統領や。君ちょっといろいろ心配になるな」 「……なんでアメリカの大統領の像がパリに?」   「そこまでは俺も知らんがな」     
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