10、バレンタイン・ディナー

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「詳しいと言うほどでは。兄貴が好きで時々付き合わされるから、それでかな。……君の年齢でワインに詳しい女がいたら、やば味しか感じひんわ」 「ああ、あのお兄さん!」   チーフがアミューズ(お通し)を運んできて、愛想よくテーブルに並べる。白いお皿の中央にマカロンの生地で作られた器がチョコンと置かれ、黄色いドロリとした何かの上に、削られたチップ状の茶色いものが山盛りに散らされている。   「スライスしたトリュフをたっぷり載せた、スクランブルエッグです」 「え! カスタードクリームの上にチョコレートが乗っているのかと思いました!」 「バレンタインですからね」     チーフがにこやかに応える。 「かかっているのはバスク地方の塩です」 「へー美味しそう! いただきます!」
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