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11、やっぱり処女をもらってください!
隠れ家的なレストランからホテルまでは意外に近かった。
720㎖の白ワイン、杏樹は最初の一杯だけで、残りは全部桜井が呑んでいる。相当の酒量のはずだけれど、見たところ足取りもしっかりして酔った印象はない。逆に、ずっとペリエで喉を湿らせていた杏樹の方が、ホテルに近づくごとに頭に血が上り、なんだかふわふわしてくる。
お酒に、酔っているわけじゃない、と思う。
これは――緊張しているのよ。
昨夜、「処女をもらってください!」なんて恥ずかしいことを言って迫っておきながら、ワイン一杯でべろべろになって爆睡してしまった。――今夜、飲み過ぎるなと桜井が釘を刺したのは、もしかしたら――
ホテルに着いたとき、ロビーはこれから夕食を取りに行くらしい、中国人の団体客でごった返していた。ガヤガヤと騒がしい集団をなんかとか避けてフロントで鍵を受け取り、エレベーターに乗る。
「すごい賑やかですね」
「せやな。日本人からすると怒鳴られているように聞こえるけど、実はそんなひどいことは言うてへん」
「……中国語もわかるんですか?」
驚く杏樹に、桜井が苦笑した。
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