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興奮で彼の息も上がり、切れ長の瞳がギラギラした光を湛えている。ニットのトップスを引っ張り上げ、防寒の下着をもどかし気に捲り上げられて、杏樹が我に返る。
「まっ……待って! せめてシャワーを浴びさせて! お化粧だって落としてない!」
「そんなことしたら寝るやろ、杏樹! 昨日、寝落ちされて俺がどんだけ――」
「寝ません! 絶対に大丈夫だから!」
「信用度ゼロや!」
杏樹が桜井の顔を正面から見据えて言う。
「お願い。だって初めてなのに。……ね。桜井さんだって、学会で疲れてるでしょ? ほら、スーツも皺になるし」
「そうやって上手いこと言うて逃げる気やろ」
「逃げません!」
必死に説得して、ようやくシャワーを浴びる猶予をもぎ取った。
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