12、巨乳無口*

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12、巨乳無口*

 杏樹がシャワーから上がって、備えつけのバスローブを纏って出てくると、桜井はドレスシャツの下にトランクス一枚の姿で、真剣に何かの箱を凝視していた。 「あ、あの……お先にお風呂いただきました」  おそるおそる声をかければ、桜井がハッと顔を上げる。かなり間抜けな格好だが、美形は得だと杏樹は思う。 「じゃ、じゃあ僕もさっと浴びてくるさかい……」  箱をサイドチェストに置き立ち上がると、杏樹をじっと見た。 「桜井さん……?」 「もし、逃げるなら僕がシャワー浴びている間が最後のチャンス……」    「逃げませんって!」    杏樹は桜井の首に自分から両腕を回し、少し背伸びをしてキスをした。 「ね、早く戻ってきて」  「わ、わかった! 人生最速記録に挑戦するさかい、逃げるなよ!」 「逃げません!」   「……それと寝落ちはなしやで!」    飛び跳ねるように浴室に向かう桜井を見送り、杏樹はホッとため息をつく。そして、思いついて自分のスーツケースを開けた。    本当に人生最速記録で戻ってきた桜井は、鼻先に綺麗に包装された四角い箱を突きつけられ、目をぱちぱちさせる。
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