12、巨乳無口*

2/8
前へ
/337ページ
次へ
「あのこれ……今日、バレンタインだから……」  「! チョコ! 僕がもらってええの?」 「日本酒が入ってる、ちょっと変わったチョコで……流用品で申し訳ないんですけど、よかったら」  健司に渡すつもりで悩みに悩んで買ったチョコ。自分でヤケ食いしてもいいけど、事情を知った上で桜井がもらってくれるなら、その方がいい。   「おおきにありがとう! 母親以外からもらうのは、六年ぶりや!」 「六年前はくれる人がいたんですか?」 「……まあね。東京で一人暮らししてたさかい、通いの家政婦さんもくれはったな……」     東京にいたというのに杏樹は驚いて、東京のどのあたり……などと尋ねたが、桜井は敢えて無視して答えなかった。 「今、食べていい?」 「今ですか? ……どうぞ?」      バスローブを羽織ってタオルを首にかけた状態で、包装を解いて箱を開ける。有名な日本酒を練り込んだチョコで、紙包みを開けると金箔を散らした一口サイズのチョコが現れる。 「あ、めっちゃ日本酒の香りする」    パクリと一口で食べて、綻んだ口元で杏樹を見る。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2333人が本棚に入れています
本棚に追加