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「甘さ控えめで美味しい。僕、実は甘いのはあまり得意でないけど、これは好きや」
「よかった!」
反応を注視していた杏樹がホッとして微笑むと、桜井が聞いた。
「杏樹も食べる?」
「う、ううん? それはバレンタインのだもの。桜井さん一人でどうぞ?」
すると桜井の手が伸びて杏樹の顎を掴み、続いて唇が唇で塞がれる。チョコと日本酒の香りのするキスに、杏樹が目を見開く。舌を絡められると、ほんのりチョコレートの味がした。
「おすそ分け……でも、杏樹のキスの方が甘い……」
キスを続けながら杏樹の腰をに腕を回し、膝の上に引き上げるので、杏樹も逆らわずに跨るようにその上に座る。髪もろくに乾かさずにきたのだろう。杏樹は濡れてウェーブが強くなった桜井の髪を両手で抱えるようにして、キスを受け入れた。口づけの角度が変わるたびに、杏樹の肩を過ぎた栗色の髪がパサリと揺れた。
「……してもいい?」
「ん……」
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