12、巨乳無口*

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 完璧に整った顔の男に焦がれるような目で尋ねられて、杏樹は思わず頷く。バスローブの紐を解こうとする男の手が微かに震えていて、この人も本当に初めてなんだなと、杏樹が思う。もどかしげに紐が解かれて、杏樹は恥ずかしさに目を閉じた。バスローブがはだけられて肩を滑り落ち――  そのまま数十秒、男の動きがピタリと止まり、杏樹がおそるおそる目を開けると、目の前の男は石化の魔法でもかかったかのように凍り付いていた。 「……さ、桜井さん?」  え? 何? 死んだの?  そう、杏樹が一瞬思うくらい、桜井は微動だにせずに露わになった二つの胸を凝視している。 「桜井さん? 息してる?」     そう言われて、桜井はようやく呼吸を再開し、叫んだ。 「巨乳や!」       自分の胸は同級生と比べてもまあ、ちょい大きいかな? ぐらいの認識だった。でも、胸が膨らみ始めたころ、瘦せ型の美奈子に散々、「バカなのは胸に養分を取られてるせい」と扱き下ろされて、少々のコンプレックスになっていた。だから、桜井に巨乳呼ばわりされて、即座に反論した。 「べ、別に、巨乳ってほどじゃ……!」
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