五章

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 急いで自室からカバンを持って降り、自宅にしっかりと鍵をかけて黒の高級車へ乗り込む。後部座席奥には今日も美しい彼女が座っている。 「おはようございます、伊織くん」 「あ、おはようございます。何かお話があると聞きましたが……」 「ええ。セバス、車を出して」 「承知いたしました」  発進した後、雫さんは真剣な面持ちでこちらを見ながら告げた。 「先程、白桜高校敷地内にて遺体が発見されたという報告がありました」 「…………え? い、遺体?」 「校舎屋上から身投げしたものと思われます」 「身投げ……じ、自殺って事ですか?」 「亡くなった人物は白桜高校に通う一年生―― 獅波和樹」 「………………えっ?」  僕は一瞬、雫さんが何を言っているのか理解出来なかった。
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