一章

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 だが、彼女はめちゃくちゃモテる。容姿の良さと天真爛漫な性格が相まって、裏ではファンクラブが発足されていると聞く。ゲルマン民族の血なのかフィジカルおばけで、様々なスポーツで好成績を残している。過去に、一つのジャンルを極めようとは思わないのか尋ねた時、こう答えられた。 「世間では二刀流とか人気でしょ? 私が目指すのは……百刀流なの!」  それを聞いて、耳や鼻に刀を差してる咲凛の姿を想像したのは内緒の話。  そんなアホ……もとい可愛らしい彼女だが、実は小学校時代から好きな相手がいる。中学卒業を期に告白をしたが、断られたのだとか。 「朝練に付き合う約束だったでしょうがぁ!」 「待ち合わせの午前二時は朝じゃない……! ぐぇえええ……! お、折れる! こ、この金獅子を止めてくれ伊織ぃ……!」  完璧なコブラツイストをかけられ、骨の軋む音と懇願の声をあげる和樹。そんな彼に優しい眼差しを向けながら僕は思う。  ……なんでコイツは断ったのだろうかと。
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