一章

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 人生は不平等だ。つくづく、そう思う。  生まれ落ちた先の環境、持ち合わせた才能。それを努力で補えると人は言うが、受験戦争を体感した僕に言わせると努力出来る事も才能だ。  幼い頃から僕には友達と呼べる存在がいない。周りは大人ばかりで、親に言われるまま愛嬌だけ振り撒いていた。  高校入学式、和樹から声を掛けられて驚きと喜びが入り混じった。咲凜を紹介され、緊張のあまり上手く喋れなかった事を思い出す。  そんな人付き合いや運動神経といった自分に持っていないものを持つ二人に、混沌の言う通り僕は嫉妬しているかもしれない。今の関係が崩れ、また孤立してしまうかもと恐怖に怯えているのも確かだ。  己の弱さが嫌になる。こんな自分だから、混沌という別の人格が生まれたのだろう。
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