一章

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「神代君ね。とりあえず立ちましょう。お金も拾わないといけないし」    ここで僕は考える。先程から差し出されている真白先輩の手を掴むべきかどうか。女性に触れた事がないので、ハードルはかなり高い。恥ずかしいし、手汗をかいているかもしれないし真白SPの目も気になる。だったら一人で立てばいいのだが、わざわざ差し出してくれている手を無視するのは失礼かもしらない。真白先輩に恥をかかせる、ましてや傷付けてしまうと僕は学校にいられなくなる。混沌、どうすればいい? 教えてくれ!  ――…………。  何故、無視をする?!  考えすぎて頭がショートしそうだ。もう覚悟を決めろ。考え方を変えるんだ。今後の人生、これほどの美女と触れる機会は訪れない。幸運と思え。悩んだ時、辛い時にこそ前へ進め。  僕は勇気を出して真白先輩と握手をする。細く、冷たく、柔らかい。えもいえぬ幸福感に包まれていると、突然真白先輩の表情が変わった。 「……その腕に付けているもの……」  えっ、と素っ頓狂な声を出した後で僕はしまったと思う。だが時は既に遅し。  横から岸先輩の腕が伸び、僕の手首を掴む。 「これはブレスレット……学校に必要でないものを持って来るのは、校則違反ですね」
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