一章

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「岸君も近衛君も、下級生を怯えさせないで下さい」 「で、ですが生徒会長……!」 「きちんと話を聞いていましたか? これは彼にとって非常に大切なものだと言っていました。勿論、規則は大事ですが、それに囚われ過ぎてもいけません」 「……会長が、そう仰るのであれば」 「なんとお優しい御方じゃあ……! 不肖、近衛! 感動で涙を禁じえません……!」  SP達が真白先輩に対して敬礼を行う。彼らにとって真白先輩は教師よりも敬う存在……いや、もはや神といって良いのかもしれない。  その後、彼女は黙って床に散らばる小銭を拾い上げてくれた。その成り行きを、僕は正座の姿で傍観する事しか出来ずにいた。金縛りにかかっているように。 「はい、これ。見落としは無いと思うけど、金額を確認してもらえるかしら」  小銭を受け取る際、再び緊張して落としそうになるのを必死に堪えた。慌てて数え、大丈夫ですと伝える。 「そう、良かった。ブレスレットの件は不問として、廊下を走るのはいけませんよ?」 「あ、は、ひゃい……!」  間抜けな返事がウケたのか、真白先輩は口元を隠して微かな笑みを浮かべた。
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