一章

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 自転車を立ち漕ぎしていると、混沌が話しかけてきた。  ――予想通りといった所か。  うるさい。まだ遅刻と決まった訳じゃない。  とはいえ、いつものルートを辿っていれば間に合わない。本当は嫌だが、あの道を通るしか方法はない。  鉄道下に存在する直線百五十メートル程のトンネル。地元で【おばけトンネル】と言われている場所だ。道幅は自転車がなんとか離合出来るくらいしかなく、昼間でも薄暗い。大正時代に造られたもので足場は悪く、深夜に通れば血塗れ少女が追いかけてくる心霊スポットとしても有名だ。
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