一章

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 そんな話をしている矢先、学校内のスピーカーからクラシック音楽が流れてきた。ホームルーム開始の十分前、ニ年前から始まったという本校独自の決まり事。 「おいでになられたぞ」  半分、馬鹿にした感じで和樹が言い、窓の外を指す。教室にいたクラスメート達も、窓に寄って様子を窺う。  校門真正面に停まった威圧感を放つリムジン。教職員一同が並び、背筋を伸ばしている。  しばらくすると執事という言葉がしっくりくる初老の運転手が、重そうな車の扉を開けた。  そこから現れたのは、一人の女子生徒。  絹のような美しく長い黒髪を靡かせ、座席から白く靭やかな脚を覗かせ地面につける。凛とした佇まいは生まれ持っての高貴さを放ち、立っているだけで芸術作品のよう。大きな瞳に九頭身スタイル、正に完璧を具現化した彼女こそ――。 「真白(ましろ)(しずく)生徒会長サマの御登校だ」
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