第1章 僕は僕で生きていく

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第1章 僕は僕で生きていく

  視界の横でロングヘアーが揺れる気配さえ愛しく感じながら 僕は恋人と並んで下校している。 こういう場合ってさ、手をつなぐタイミングがわからないんだよ。 道を歩く恋人同士を見ると、手をつないでると歩きにくくないか? なんて感じで見てたけどさ。 今では皆様方に声をかけて「どうやったら手をつなげるんですか!」 とか聞いて回りたいくらいだよ。 いや、そんな行動力があれば手をつなげてるような気もするけどさ。 なんとも情けない......。 幼馴染の女の子とは普通に接してるのに。 恋だとここまでになるのか。 「あの、麻木(あさぎ)先輩」 「はいっ、なんですか!」 手が手で手を手にってばかり考えていた僕は、後輩の恋人を相手に 敬語で返答してしまった。   「手編みのマフラーを先輩のために編みたいんですけど、 それって、ダメですか? 男の人にとっては、受け取りにくいとか? いろいろある気がして......」 「いや、それは......」 「あっ、やっぱり、迷惑ですよね......そこまですると重いですよね」  彼女がうつむき、猫のように大きな瞳を潤ませた。 「ちがう、ちがう、ちがう!ちがうんだよ! 手編みとか最高っ!に、嬉しい! ただ、僕ね、首がダメなんだよ」 「え?」 彼女が小首をかしげた。 死ぬ、もう死ぬ、萌え殺されるコレ!
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