第1章 僕は僕で生きていく

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地味な顔で冴えなくて身長が165センチと低いのがコンプレックス。 その僕に、身長153センチの黒髪ロングの美少女の恋人ができた。 これって、なんか、なんか、おかしくないか? なんだかリアルさが欠けてるっていうか、二次元っぽいっていうか。 もしかしたら昏睡状態で瀕死で寝ている夢かもしれないとか。 世界線が歪んで虚無の空想次元で仮想現実がループしてるとか。 いやむしろそのほうが納得できるというか。 このあと衝撃の事実が明るみに!とか。 なんかある!きっとある?あったら......嫌だ。 「先輩、首がダメって、どういうことですか?」 手から移行して、今度はアニメオタク全開の脳内で勝手に 悶えていたら、彼女が可愛い声で聞いてきた。 「あっ、それなんだけど......僕ね、首だけ過敏症なんだよ。 原因不明なんだけど生まれたときから。 とにかく首に何か触れてると苦しくなるんだ。だから、ほらっ」 僕は自分の制服の首元を指差した。 2月でコートを着ているのに、マフラーを巻いてないし、シャツの ボタンの一番上を止めてないし、ブレザーの制服にネクタイだけど 軽くゆるめてキッチリとは締めていない。 「両親が学校側に説明してくれて、許可をもらえたほどなんだ。 ネクタイはだらしなく見えない程度にゆるめるってことで、 これ以上は下げないようにはしてるけどね。 それと美容院で首にタオルを巻かれるときも、ゆるめてもらうんだよ」 「そうだったんですか。いつも首が寒そうだなって思ってました。 けっこう、大変なんですね......」 彼女が驚いたような戸惑ったような表情になっている。 「まあ、ちょっと寒いけどね、困るってほどじゃないよ」 そう、僕にとっては生まれつきであり、赤ん坊の頃からなんだ。 もうすっかり慣れてしまっている。 「それなら......セーターとかは、どうかな? あっ、もちろん首元はV字型にしますっ」 彼女が小さな手をパンッと叩いてから、笑顔をみせてきた。 「えっ!マフラーは縦長だから編みやすそうだけど、 セーターとかすっごく難しそうなのに......編めるの?」 「はい、編み物は得意なんです」 これで手料理とかつくってくれたら......女神だ。 「あと、料理も得意なんですよ、お菓子もね、クッキーやケーキも 自分で作れるんです。先輩に食べてもらいたいなぁ」 本物の女神だった。
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