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「へぇ、省吾って4月生まれなんだ?じゃ、もう13才だ。4月のいつ?」
「14日」
「先週かぁ、わかってればここでお祝いしたのに」
あずさが言ってくれる。多分、社交辞令じゃなくて本音。
なんか、こいつも気持ちのいいやつ。姐御肌って言うのかな。
「省吾」
「ん、なに?」
隣の静流が例の綺麗なでっかい瞳で俺を見てる。やっぱりちょっと胸がどきどきするなぁ。
「これ、あげる。お誕生日のプレゼント」
静流が俺の前に電子オルゴールを押し出した。
え?もらえないよ、静流が一生懸命に作ったオルゴールだろ。
「今までで一番上手に出来たんだよ。音もきれいに透ってて…だから省吾にあげる!」
「いや、気持ちだけでいいから」
俺はどこかで聞いた大人の言葉を言う。
本当は欲しかったけど…静流が作ったものをすごく欲しかったんだけど。
「気に入らないかなぁ…」
静流がちょっと悲しそうな顔をする。
いや、そうじゃなくて…!
「もらいなさいよ省吾、静流の自信作だってよ」
あずさと美咲が笑う。雅之とタキもうなずいている。
大輝は…?
大輝は、見事なくらいそっぽを向いていた。すごく解りやすい。でも…
「もう1曲入ってるの『グリーン・スリーヴス』ってスコットランドの民謡。私、この曲が一番好きで…省吾にも聞いてもらいたいな」
あ、もうだめだ。
そんな笑顔で俺を見ないでくれよ、決心が…鈍る…!
でも、本当はすごく欲しい…だけど
「省吾…いらない?」
ちょっと哀しそうな静流の顔を見た時、俺はテーブルの上のオルゴールを思わず引っつかんでいた。
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