出逢い

12/21
前へ
/104ページ
次へ
  「へぇ、省吾って4月生まれなんだ?じゃ、もう13才だ。4月のいつ?」 「14日」 「先週かぁ、わかってればここでお祝いしたのに」    あずさが言ってくれる。多分、社交辞令じゃなくて本音。  なんか、こいつも気持ちのいいやつ。姐御肌って言うのかな。   「省吾」 「ん、なに?」    隣の静流が例の綺麗なでっかい瞳で俺を見てる。やっぱりちょっと胸がどきどきするなぁ。   「これ、あげる。お誕生日のプレゼント」    静流が俺の前に電子オルゴールを押し出した。    え?もらえないよ、静流が一生懸命に作ったオルゴールだろ。   「今までで一番上手に出来たんだよ。音もきれいに透ってて…だから省吾にあげる!」 「いや、気持ちだけでいいから」    俺はどこかで聞いた大人の言葉を言う。  本当は欲しかったけど…静流が作ったものをすごく欲しかったんだけど。   「気に入らないかなぁ…」    静流がちょっと悲しそうな顔をする。  いや、そうじゃなくて…!   「もらいなさいよ省吾、静流の自信作だってよ」    あずさと美咲が笑う。雅之とタキもうなずいている。    大輝は…?    大輝は、見事なくらいそっぽを向いていた。すごく解りやすい。でも…   「もう1曲入ってるの『グリーン・スリーヴス』ってスコットランドの民謡。私、この曲が一番好きで…省吾にも聞いてもらいたいな」    あ、もうだめだ。    そんな笑顔で俺を見ないでくれよ、決心が…鈍る…!    でも、本当はすごく欲しい…だけど   「省吾…いらない?」    ちょっと哀しそうな静流の顔を見た時、俺はテーブルの上のオルゴールを思わず引っつかんでいた。    
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加