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帰るまでの時間、大輝の視線が本当に痛かった…
「じゃあ、またね!」
大輝の家の前でみんなと別れた。
あずさと美咲、雅之は同じ方向。ちょっと離れた所に家のあるタキは自転車だ。
俺はというと、何故か静流と帰る方向が一緒で。それがますます大輝の神経を逆撫でていたのは、言うまでもない。
月曜日、普通に口を利いてくれるかなぁ…
痛いくらいの大輝の視線を背中に浴びながら、俺と静流は家路に着いた。
「あの、さ…」
しばらくふたりで無言のまま歩いた後、俺は思い切って静流に声を掛けた。
「今日はありがとう、これ…」
自分のスポーツバッグを持ち上げ、例のオルゴールを示す。
大事に持って帰らなきゃ。そりゃもう、命よりも大事に。
「うん、受け取ってくれて嬉しい」
にこっと笑う静流。
俺は又、自分の顔が赤くなるのを感じて思わず前を向いた、
「あのさ、静流の…」
「ん?」
「静流の誕生日を教えて。お礼するから」
よし、言えた。何とか、言えた!
「え?いいよ、お礼なんて」
いや、そんな事言わないでよ。俺、やっと言えたんだよ。
こんなにすごいもの貰っちゃったのに。
静流の手作りのオルゴール。世界でたった一つだけ。
「俺の気が済まないから」
俺は自分で自分に言い聞かせるように言う。
「え…と、じゃ、実は5月5日なの」
ぺろっ、と。静流が可愛い舌を出す。
「だからね、うちの両親は私が生まれるまで完全に男の子だと固く信じてたんだって。失礼よね~」
そう言って静流は笑った。本当に、花みたいな笑顔で。
男の子じゃなくて本当に良かった…
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