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「省吾、おめー何やってんだ?」
「え?」
工具の入った戸棚をガタガタ開けていたら、台所にいたはずの親父に見つかってしまった。
「父ちゃん、単3の電池知らねぇ?確か買い置きがあったと思ったんだけど」
「さて?まだあったかな。何に使うんだ?」
「うん、ちょっと」
静流にもらったオルゴールをずっと聴いてたら電池が切れてしまった。買いに行こうにもコンビニは遠いし。
「2番目の棚に無けりゃもう無いぞ。明日じゃダメなのか?」
「そういう訳じゃないけど…」
もうちょっと聴いていたかったな。
せっかく静流が好きだって言ってたグリーン・スリーヴス。生まれて初めて聴く曲だったけど、なんかちょっと悲しげで、すごく綺麗なメロディ。
「急ぎじゃないんなら明日買って来い。ほら、すぐ晩飯だぞ」
「うん…」
無い物は仕方ないよな。
俺は手を洗って居間に入った。
「父ちゃん、今日は?」
この時間、親父がうちにいるのは本当に珍しい。休みって訳でもないだろうし。
「夜中の2時ごろ出るよ。近場だ、東京。明日学校休みだし、たまにはお前も行くか?」
俺がまだ小さい頃、親父はよく俺をトラックに乗せて仕事に連れて行った。今は学校があるし、一人で留守番が出来る様になったからめったに付いて行かないけど。
トラックに乗ってる時の親父はすごくカッコいい。
あのでかい10tトラックを苦も無く操る姿は、本当にカッコいいんだ。
それを見る為に、普段なら絶対一緒に行くんだけど…
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