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結局俺は、映画の内容をまったくと言って良いほど覚えていなかった。
ずっと静流を見てたから。
映画を見て泣いたり笑ったりする静流を、本当に胸がいっぱいになりながら見ていたから。
ただ映画が終わって明るくなった時に、まだ顔が赤かったらどうしようと。俺はただそれだけを心配していた。
「面白かったね~省吾」
映画のクレジットが流れ、辺りが次第に明るくなる。
周りがざわざわと、席から立ち上がる。よかった俺、もう熱くない。
「あ…」
自分も立ち上がった時、ポケットの中の包みが気になった。ちょうどいい、今渡してしまえ。
「静流、これ」
「なに?」
俺は強引に静流の小さめの手にその包みを載せる。
「誕生日のプレゼント」
それだけを言って、静流の顔を見ずに歩き出した。
ヤバイ、また顔が熱くなってきた…静流に見られたら恥ずかしいだろうが。
「省吾!」
静流が早足で追いかけてきたのがわかった。そして俺の隣に並ぶ。
静流、すごく可愛い笑顔だ。
「ありがとう省吾、すごく嬉しい!!」
「…うん」
俺は返事をするのがやっとだった。
気に入ってくれるといいな。
ホントはすごく不安。
でも、静流の笑顔。
俺の方こそすごく嬉しい。
映画館を出るまでに、この顔の熱さが治まるのをひたすら願っていた――ー
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